前節の藤枝戦の敗戦はショッキングだった。勝たなければいけない勝負の９月。その初陣でいきなりの敗戦。自分たちがやろうとする戦いもできなかった。

「伸二さん（小林監督）も『前からボールを奪いにいくぞ』と言っていましたが、僕らが表現できなかった。前後の意思統一が薄かったと思います」

　夏の中断期間中にチーム力を引き上げようと守備のバリエーションを増やしたが、それが今、選手たちの迷いに繋がっている感もある。大島にもその感覚があり、修正が必要だと言った。

「僕たちの強みは、まずボールを前から奪い取りに行くこと。そうすることで攻撃回数が増えるし、ゴールを獲る確率も上がる。伸二さんもそれを求めていますが、そうなるためには僕ら自身に強気の姿勢がないといけないんです。残りは８試合。負けたくない、やられたくないという気持ちがどうしても出てくるけれど、だからこそ、強気にチャレンジする姿勢が大事になる。僕らのようなチームは前向きなハイプレッシャーにチャレンジしたほうが相手は嫌がるし、勝つ確率は上がると思うんです。どの試合も恐れずに相手に立ち向かう必要があるし、そういう姿勢がないと勝負にならないと思っています」

　今週の練習の冒頭では改めて指揮官からそのような戦いをする必要があると指摘が入った。それを受けて、選手たち同士でもう一度意識を擦り合わせた。主将の佐藤祥も選手たちを集めた前で「今までどうりでは何も変わらない。全員が意思統一し、全員がこのチームのためにできることを表現しないとダメだ」と喝を入れた。

　大島には栃木が良いときのイメージが明確にある。例えば、21節ホーム千葉戦。大島が相手GK藤田和輝の縦パスを前でインターセプトし、そのままゴールを奪ったゲームだ。チーム全体で「強気」を共有し、実際に前でボールを奪い取れた結果、ゴールと勝利を掴みとった。

「僕らが前から守備をハメられるときがあれば、相手に背後を取られてピンチになるときもある。でも、背後を取られたならば必死に戻ればいいんです。勝てていない今こそ、僕らには強気な姿勢が必要。ましてや、今節の水戸に対して中途半端な戦いをすれば確実にやられると思います。僕たちの強みはアグレッシブさ、球際の強さ、パワー。それらで相手を圧倒する。強い気持ちで挑まないとダメなんです」

　大島には危機感しかない。思えば、昨季の今頃の大島は無双していた。昨季の後半戦だけで７ゴールを奪い、点取り屋であることを自ら証明した。あの頃の大島は「練習から本気になって仲間にパスを要求していたし、何度も修正を求めていた」。

「あのときの状態を思えば、僕自身もまだ足りていないと思っています。前節の藤枝戦でも相手陣内で相手GKのミスパスを引っ掛けた場面がありましたが、シュートを打たずにパスを選択してしまった。去年の今頃のマインドだったら迷わずシュートを打っていた。そこは今節からすぐに変えないといけない」

　「強気」「本気」を強く握り締め、大島が決戦のピッチに立つ。

（文・鈴木康浩）