いったいどれだけ走るんだ――。
　中野克哉の超ハードワークがファン・サポーターの注目を集めている。直近３試合は90分+アディショナルタイムまでフルタイム出場。死闘となった前節群馬戦は最後に相手の猛攻を受けたが、その苦しい時間帯でも相手ボールに何度も食らいつく中野の姿があった。
　「勝つためには最低限やらなければならないことだし、一人がサボってしまえばやられる。この３試合はたまたまフルタイムで試合に出させてもらう中で、やらなければいけない立場だと自覚しているし、あれだけ頑張って最後にやられたら、次の一週間がもやもやするので、後悔したくないんですよ」
　中野は普段は飄々としているし、あのハードな姿と結びつかないところがある。かつ、左利きのテクニカルな選手があれをフルタイムでやり切ってしまうから注目を集めるのかもしれない。
　チームのために献身的に足を動かし続けながら、その中で、２試合前の沼津戦では最後の２ゴールに絡み、前節群馬戦では63分に左ポスト直撃の決定打を放ってみせた。プロとして得点やアシストで評価されてきた自負はある。だがそれだけでは足らないと分かっている。うまい選手がハードに戦い切る。それが目指す選手像だ。
　「（前所属の）長澤徹監督率いるRB大宮アルディージャはみんなが当たり前のようにタフにやっていたし、中でも前線のトヨ君（10番の豊川雄太）を見ていてもシンプルにすごいと感じてきたので。もともと僕は曺貴裁監督が率いる京都サンガF.C.からプロキャリアをスタートしたこともあり、”頑張れる選手”がチームのなかで不可欠な存在になると痛感してきたので、自分もそうありたいなと」
　栃木SCに加入すると小林伸二監督からも「攻撃ができることは知っている。でも守備もできる選手がすごくいい選手なんだよ」と諭され、よしやってやろうと心を決めたことも今に繋がる。前所属の大宮では試合に絡めず、移籍を決断した栃木SCで主軸の座を掴んだことは前進に違いないが、慢心は一切ない。昇格するにはもう後がないチームを勝たせるために、これをやり続けなければ、前線の自分が結果を残さなければ、そんな焦りに似た思いも強く締めている。
　３連勝で迎える今節、ホームで６位の奈良クラブを叩けば、昇格プレーオフ圏内との差を一気に縮められる。
　「僕らはチャレンジャーです。走るとか、戦うとか、それらを外してしまえば簡単にやられる。それはもうみんながわかっています。前節の群馬戦でもあれだけのサポーターがアウェイに駆けつけてくれて、熱狂的に後押ししてくれて、本当にありがたいし、今度はホームですから。次もピッチでハードに戦って、彼らに結果で示し続けるしかないと思っています」
　この流れを継続し、４連勝、５連勝と重ねていけば自ずと先は見えてくる。その過程には、身を粉にしてハードに戦う中野克哉がいる。

　
（文・鈴木康浩）